因子数決定法の検討

Holzinger and Swineford(1939)の知能データをもとにして


堀 啓造(香川大学経済学部)
2003/03/24

counter: (2003/03/24からの累積)
最終更新日:


Holzinger & Swineford(1939) data

服部(2002,2003)の開発した因子数決定援助プログラムは非常に便利である。堀(2002)がこれをexcelで利用し,結果を見やすくするvbaアプリを作っている。これまた非常に便利である。現在これを使って,因子分析の基本を学習する因子分析練習帳なるものを企画中である。基本スキーマはすでにできているが,なかなか進まない。そんななかで,Holzinger & Swineford(1939)のデータを使ったものを考えた。私が因子分析の本として読むべき本と考えるGorsuch(1983)が例として使っているからだ。Gorsuch は Holzinger & Swineford(1939)に素データが掲載されていること,平均,SD,相関行列が素データから計算すると違っていることを指摘している。

このデータは因子分析の基本文献である Harman(1976)でも使用されている。また,この本の起源となったであろう,Holzinger and Harman(1941)でも使用されいる。さらには日本における因子分析の基本文献である芝(1979)(ただし16変数)においても使用されている。そういう意味では因子分析の代表的データであるといえる。Carroll(1993)によるとこのデータを再分析した論文・書籍を22挙げている(Bentler,1977; Bentler & Wingard, 1977; Bloxom, 1972; Crawford & Ferguson, 1970; Gorsuch, 1974; Guertin, Guertin, & Ware, 1981; Hakstian, 1971; Hakstian & Abel, 1974; Harman, 1976; Hendrickson & White, 1964; Jennrich & Sampson, 1966; Joreskog, 1978; Katz & Rohlf, 1974; Kashiwagi, 1965; Koopman, 1973; Lee & Comrey, 1979; Lee & Jennrich, 1979; Linn, 1968; Lohman, 1979, Merdith, 1964; Tryon & Bailey, 1970; Tucker & Lewis, 1973;これらの文献については下の引用文献にはのせない) 。さらに服部(2003)にも再分析がある。また,服部の言及している Mplus のサイトでもこのデータを分析している。(追加:Preacher and MacCallum(2003) UNDERSTANDING STATISTICS, 2(1), 13-43 Browne(2001) Multivariate Behavioral Research, 36, 111-150.においても分析している)

Holzinger & Swineford(1939)のデータは2つある。イリノイ州のフォーレストパーク村のPasteur小学校 と シカゴのGrant-White小学校 の7,8年生のデータである(日本の中学1.2年生)。それぞれPasteur群Grant-White群と呼ぶ。Pasteur群は平均知能が94と平均(100)よりやや劣る。Grant-White群は数値は明らかでないが,学校では平均よりややよいとのことである。テストをすべて受けたものは Pasteur群156名,Grant-White群145名である。明確な男女差はなかったので男女込みの分析をしている。Pasteur群の親は外国生まれが多いし,家庭では母語を使っている。Pasteur群の両親とも外国生まれは48%, 両親とも米国生まれは29%である。一方,Grant-White群は両親とも外国生まれは15%,両親とも米国生まれは72%である。また,Grant-White群のほとんどは学校の近くで生まれている。両群の知能差はこのテストにおいても確認された。

Pasteur群は24テストをしている。Grant-White群テストをしている。テスト3,4 が難しかったので,同タイプの易しいテストをテスト25,26も行っている。

行ったテストは事前に5因子を想定している。
Spatial tests(空間)
1. Visual Perception: Spatial
2. Cubes: Spatial
3. Paper Form Board: Spatial
4. Flags: Spatial
Verbal tests(言語)
5. General Information: Verbal
6. Paragraph Comprehension: Verbal
7. Sentence Completion: Verbal
8. Word Classification: Verbal
9. Word Meaning: Verbal
Speed tests(速度)
10. Add: Speed
11. Code: Speed
12. Counting Groups of Dots: Speed
13. Straight and Curved Capitals: Speed
Memory tests(記憶)
14. Word Recognition: Memory
15. Number Recognition: Memory
16. Figure Recognition: Memory
17. Object-Number: Memory
18. Number-Figure: Memory
19. Figure-Word: Memory
Mathematical ability tests(数学能力)
20. Deduction: Math
21. Numerical Puzzles: Math
22. Problem Resoning: Math
23. Series Completion: Math
24. Woody-AcCall Mixed Fundamentals, Form I: Math
Additional spatial tests(追加空間テスト)
25. Paper Form Board: Spatial (3と対応)
26. Flags: Spatial (4と対応)
Gorsuch(1983)は素データから計算した平均,SD,相関行列が Holzinger & Swineford(1939)のものと合わないことを指摘している。Holzinger & Harman(1941)の平均,SDは Holzinger & Swineford(1939)と少し違っている。一般に Grant-White群のデータを使っている。そして,テスト3,4テスト25,26と置き換えた24テストを使っている。Holzinger & Harman(1941)によるとテスト3,4がこのグループの生徒には難しすぎることが分かったからである。Gorsuch(1983)でもテスト3,4を因子分析から落としている。

Muthe'n & Muthe'n のデータは学生が入力したものとしているが, Grant-White群のデータであるが、テスト3,4をそのまま使って,テスト25,26を落としている。

Holzinger & Swineford(1939)の素データを入れてチェックしたところ,Gorsuch(1983)と平均,SD,相関行列において一致しないところがあった。 Muthe'n & Muthe'nとは素データと完全に一致する。相関行列は小数点3位まで完全に一致する。また,Pasteur群の素データはインターネットで見ることができない,Muthe'n & Muthe'nのデータは分析に使わないデータも多く含まれているということから,これらの素データをインターネットに掲載することにした。

使用データ

データのexcel ファイル

 表1にあるように5つのデータがある。(1)はHarman(1976)の相関行列である。(2)はGorsuch(1083)の相関行列である。(3)〜(6)はHolzinger and Swineford(1939)の素データである。

 被験者の違い、少数の変数の入れ替えがあり、解の頑健性,指標の有効性をチェックするのに興味深いデータとなっている。


表1.使用データ

使用テスト除外テスト被験者数備考
(1)Harman(1976)test 1,2, 5-26test 3,4 を除外145Grant-White A の相関行列(値が少し違う)
(2)Gorsuch(1983)test 1,2, 5-26test 3,4 を除外145Grant-White A の相関行列(値が少し違う)
(3)Grant-White Atest 1,2, 5-26test 3,4 を除外145素データ
(4)Grant-White Btest 1-24test 25,26 を除外145素データ
(5)Pasteurtest 1-24156素データ
(6)全体test 1-24test 25,26 を除外301素データ

 (1)〜(3)は同一データを処理したつもりのものである。入力データのミスまたは相関行列計算上のミスがある。(3)が正しいデータと考えられるが、Holzinger and Swineford(1939)の校正ミスも考えられる。(1)〜(3)のような多少の変動により、因子数が大きく変わることはあまり考えられない。2因子以上の違いはその指標が敏感すぎることを示唆する。(1)はテスト25,26をテスト3,4の位置に入れている。
 データ(3)、(4)は同一被験者で、24テスト中2つのテストを入れ替えたものである。(3)のテスト25,26は(4)で使ったテスト3,4を簡単にしたものである。その他の22テストは同一データである。これらも同一の因子となっているものと期待される。
 (4)(5)は同一のテストを異なるサンプルに対して実施したものである。(6)は(4)(5)をあわせたものである。これら3つの因子が大きく異なることは考えにくい。
 (1)〜(6)の分析において因子数が大きく異なるとは考えにくい。(1)〜(5)のデータはサンプルサイズが小さい。Hu and Bentler(1999)では250以下を小さいサンプルサイズとしている。適合度の指標があまり信用できない。1000以上において安心サンプルサイズとなる。


因子決定指標

服部(2002)を使用して、各種因子決定指標を求める。

Holzinger & Swineford(1939)では一般因子と5因子を想定していた。しかし、結果として一般因子と4因子を採用した。

斜交因子として考えると4因子解を採用したことになる。Holzinger & Harman(1941)のセントロイド解は同じく4因子である。Harman(1976)は5因子解と4因子解を乗せている。

服部(2002)によって求めた結果を表1に示す。

サンプルサイズが小さい,一事例でしかないため極めて限定されたものであることを念頭においてほしい。

つまり、その指標の排除の可能性は高めるが、採択の可能性は高まりはしない。

 推定因子数差からするとAGFIはまったく使えない。3因子の差がある、SE-SCREE, χ2, GFI, NFI, 0.95を基準とする NNFI(TLI) は探索的因子分析に使うのはよくない。2因子差のある、PA-EIGEN-95, SMC-EIGEN, AIC, CAIC も信頼できない。

 推定因子数差がRAW-EIGEN, PA-SMC-M, BIC, 0.90基準のNNFI(TLI)はどちらともいえない。
 推定因子数差がMAP, PA-EIGEN-M, PA-SMC-95, RMSEA, PGFI, RGFI, RMSR および.90 を基準とするCFI はこの事例においては安定した指標となっている。

表2.各種因子決定指標による因子数(適合度指標は最小因子数を示した)

test1,2,5-261-24
dataHarmanGorsuchGrant-
White A
Grant-
White B
Pasteur 全体  推定
因子数差
個体数145145145145156301
MAP-TEST4444440
RAW-EIGEN5555541
PA-EIG-M4444440
PA-EIG953332442
SMC-EIGEN1314131312122
PA-SMC-M4444451
PA-SMC-954444440
SE-SCREE7575643
CHI^27764563
AIC5445562
BIC3333341
CAIC3332342
RMSEA4444440
GFI6765543
AGFI-----6++
PGFI2222220
RGFI3333330
RMSR3333330
NFI7777643
NNFI=TLI7(4)7(4)6(4)4(3)5(4)5(4)3(1)
CFI5(3)5(3)5(3)4(3)4(3)5(3)1(0)

(1)堀(2001)の薦めるMAPPA-SMC95 をみると両者とも4つの場合4因子を示している。最小数、最大数とも4であるので、4因子解が適切であるということになる。

(2)PA-SMC95 以外の固有値系因子数判定法について。
よく使われる Kaiser の基準のRAW-EIGENは全体が4でありその他が5である。比較的良好な推測をしている。

Horn(1965)のオリジナルの形の平行分析(PA-EIG-M)はすべて4因子とよい予測をした。これの改良版として提出されたPA-EIG95はMAP よりも少ない因子数の推測もあり、しかも安定した推定をしない。Hornのオリジナルの平行分析よりもよくない。使用しないほうがいいだろう。

対角に SMC 入れた分析(SMC-EIGEN)の場合、ほかの推定法に比べ極端に多くの因子数を推測する。SMC平行分析よりもこれほど大きな差になることはそれほど多くないが、このデータにあるようにかなり多めの因子数を推定するので実用には使えない。

対角SMC平行分析(PA-SMC-M)は全体が5因子である以外は4因子である。良好な推測をしている。しかし、このデータではPA-SMC-95のほうがよい推測となっている。可能な最大の因子数を推測するためのものであるので、今のところどちらがよいかの判断は難しい。

図1〜図8において、対角1のスクリープロット、平行分析、対SMCのスクリープロット、平行分析を示した。この図を観察すれば、対角SMCの平行分析がまさにスクリーを示していることがわかる。それに対して、対角1の平行分析はスクリーとは関係ない。このことから、対角SMCの平行分析が可能な最大因子数を表すことがわかる。それに対して、対角1の平行分析はSchweizer(1992), Turner(1998) が指摘するように、一般因子的なものがあると、過小推定してしまうという欠点をもつ。PA-EIGEN-M に関して、今回のデータではそのようなことにならなかった。堀(2001)において、人工データとThurstone & Thurstone(1941)において実際に過小推定することを示した。この欠点を持つため対角1を安定した指標と見なすわけにはいかない。対角SMCの平行分析はその点それ以上の因子をとってはいけないという指標となりうるのである。今回の分析においてもよい指標であることを示した。
(3)情報量系をみると数値は変動している。情報量指標間の関係は一貫しており、AIC>(=)BIC>=CAIC という順になっている。これは計算式から予測されることである。4を指しているのはAICのGrant-White A、BICCAICは全体のみである。サンプルサイズの小さいときはAICが比較的いい予想をし、サンプルサイズの大きいときはBICが比較的よい予想をする。しかし、どのようなときにサンプルサイズが大きくて、どのようなときにサンプルサイズが小さいかは難しい問題である。また、AICの結果からもわかるようにサンプルサイズが小さくてもいい推定をするわけではない。ほかの結果から、AICはサンプルサイズが大きいとき確実に過大に推定する。以上のことからAICは因子数決定に使えない。BICCAICはサンプルサイズが小さいときは因子数を過小に推定する。サンプルサイズが大きいときの挙動はもっと多くのデータを分析してみないとわからない。

(4)適合度指標系をどのように評価するかは難しい。適合しているとする判断基準が統一されているとは言い難い。また、基準が確定したとしても、許容範囲にあるものをすべてよしとするのか、最小因子数をよしとするのかによって違ってくる。適合度の考え方からすると、許容範囲にあるものをすべてよしと考える方が無難であろう。ここでは冒険的に最小因子数をもとにする。

適合度指標として、比較的その許容範囲、拒否範囲を明確にしている RMSEA がすべての場合において4因子と推定している。GFINFI はサンプルサイズの影響を受け、サンプルサイズが大きくなった全体の場合にのみ4因子と推定している。RGFI ,CFIは一貫しているが、3因子と過小推定をしている。適合度指標の場合、上に述べた理由から、大きな問題ではない。NNFI (古くからある Tucker & Lewis 指標 TLI である)は0.90 基準を使うと比較的一貫して4因子としている。AGFIは小サンプルにおいて適合度基準まだ達しない。しかも全体においては6因子と4因子は適合していないとの推定である。これは使えない。



図1.GrantーWhite 校 A データの対角1スクリープロット


図2.Grant-White 校 B データの対角1スクリープロット


図3.Pastuer 校 データの対角1スクリープロット


図4.全データの対角1スクリープロット



図5.GrantーWhite 校 A データの対角SMCスクリープロット


図6.Grant-White 校 B データの対角SMCスクリープロット


図7.Pastuer 校 データの対角SMCスクリープロット


図8.全データの対角SMCスクリープロット


因子パタン

Grant-White A の4因子解の斜交回転(promax k=3)の因子パタンは表3のようになる。
想定していた5因子のうち数学能力因子以外はきれいに抽出されている。数学能力因子が空間因子と速度因子に分かれて負荷している。
 5因子解の場合は表4にある。5因子解にすると速度因子が2つに別れ、数学能力の因子は分裂したままである。このことからも、5因子解がよくないことがわかる。
 相関行列を観察する。言語因子項目間に高い相関があり、他を寄せ付けないクラスターになっている。速度間には .5以上を含む中程度の相関がある。記憶因子の項目間ではすべて.5以下であり中心が.3台の低い相関がある。空間因子の項目間は記憶因子の項目間よりややよい相関があるが、中程度の相関である。記憶因子の項目間は中程度の相関があるが、速度因子と関連する項目と空間因子と関連する項目に分かれる。後の確証的因子分析において相関を設定している、テスト10とテスト24との間の相関がとくに問題であろう。試しにテスト24を除いて分析したが、結果は入れた場合とほぼ同じである。5因子解で割れるのは速度因子であって、数学能力因子は生じない。
 全体のデータの5因子解はクリアではないが数学能力因子が生じる。その場合でもテスト20, 22, 23は空間因子のほうに負荷している。テスト10, 21, 24の因子が生じるのである。いずれにしても5因子解は採用できない。

表3.Grant-White A の4因子解の斜交回転(promax k=3)の因子パタンと共通性

1 2 3 4 共通性
9. Word Meaning: Verbal  0.877  0.115  0.011  0.070  0.748
7. Sentence Completion: Verbal  0.859 - 0.039 - 0.022 - 0.102  0.709
6. Paragraph Comprehension: Verbal  0.809  0.079 - 0.021  0.072  0.681
5. General Information: Verbal  0.783 - 0.099 - 0.002 - 0.051  0.648
8. Word Classification: Verbal  0.548 - 0.149 - 0.199 - 0.052  0.516
10. Add: Speed  0.074 - 0.912  0.315  0.040  0.770
12. Counting Groups of Dots: Speed - 0.137 - 0.764 - 0.155 - 0.074  0.569
13. Straight and Curved Capitals: Speed  0.040 - 0.523 - 0.419 - 0.156  0.538
11. Code: Speed  0.060 - 0.465  0.004  0.254  0.422
24. Woody-AcCall Mixed Fundamentals, Form I: Math  0.270 - 0.434  0.023  0.196  0.499
21. Numerical Puzzles: Math  0.023 - 0.380 - 0.312  0.091  0.414
1. Visual Perception: spatial - 0.001 - 0.063 - 0.734 - 0.019  0.563
25. Paper Form Board: spatial  0.028  0.135 - 0.612  0.012  0.349
26. Flags: spatial  0.135  0.005 - 0.537 - 0.048  0.347
2. Cubes: spatial  0.011 - 0.023 - 0.470 - 0.022  0.225
23. Series Completion: Math  0.254 - 0.111 - 0.418  0.100  0.496
20. Deduction: Math  0.291  0.036 - 0.318  0.213  0.421
22. Problem Resoning: Math  0.281  0.027 - 0.310  0.222  0.415
17. Object-Number: Memory  0.022 - 0.116  0.117  0.653  0.451
14. Word Recognition: Memory  0.095  0.044  0.080  0.588  0.340
15. Number Recognition: Memory - 0.007  0.033 - 0.011  0.551  0.291
16. Figure Recognition: Memory - 0.107  0.057 - 0.372  0.484  0.434
18. Number-Figure: Memory - 0.157 - 0.257 - 0.209  0.424  0.409
19. Figure-Word: Memory  0.046 - 0.067 - 0.135  0.349  0.242

表4.Grant-White A の5因子解の斜交回転(promax k=3)の因子パタンと共通性

1 2 3 4 5 共通性
9. Word Meaning: Verbal  0.865  0.105 - 0.012 - 0.065 - 0.033  0.743
7. Sentence Completion: Verbal  0.860 - 0.029 - 0.033  0.112  0.032  0.714
6. Paragraph Comprehension: Verbal  0.832  0.137  0.016 - 0.118  0.101  0.709
5. General Information: Verbal  0.776 - 0.083 - 0.001  0.036  0.040  0.643
8. Word Classification: Verbal  0.537 - 0.142 - 0.222  0.073  0.036  0.519
10. Add: Speed  0.063 - 0.932  0.300 - 0.006  0.058  0.792
12. Counting Groups of Dots: Speed - 0.146 - 0.719 - 0.161  0.084  0.162  0.564
24. Woody-AcCall Mixed Fundamentals, Form I: Math  0.246 - 0.473 - 0.023 - 0.158 - 0.061  0.520
21. Numerical Puzzles: Math - 0.005 - 0.389 - 0.344 - 0.072  0.014  0.431
1. Visual Perception: spatial  0.007  0.035 - 0.676 - 0.040  0.213  0.547
25. Paper Form Board: spatial  0.025  0.180 - 0.612 - 0.015  0.091  0.354
26. Flags: spatial  0.121  0.005 - 0.556  0.071  0.012  0.352
23. Series Completion: Math  0.210 - 0.169 - 0.505 - 0.036 - 0.116  0.553
2. Cubes: spatial - 0.006 - 0.017 - 0.474  0.014  0.005  0.223
20. Deduction: Math  0.245 - 0.046 - 0.418 - 0.147 - 0.204  0.491
22. Problem Resoning: Math  0.250 - 0.004 - 0.358 - 0.199 - 0.078  0.432
17. Object-Number: Memory  0.020 - 0.126  0.074 - 0.611 - 0.029  0.428
14. Word Recognition: Memory  0.103  0.086  0.078 - 0.604  0.071  0.351
15. Number Recognition: Memory - 0.007  0.042 - 0.028 - 0.546 - 0.009  0.288
16. Figure Recognition: Memory - 0.109  0.091 - 0.368 - 0.500  0.052  0.435
18. Number-Figure: Memory - 0.169 - 0.253 - 0.234 - 0.402  0.015  0.404
19. Figure-Word: Memory  0.044 - 0.049 - 0.141 - 0.346  0.045  0.239
13. Straight and Curved Capitals: Speed  0.067 - 0.337 - 0.351  0.104  0.565  0.747
11. Code: Speed  0.097 - 0.288  0.131 - 0.397  0.434  0.587

Harman(1976)双因子解モデルの評価

MPlus のホームページでは、Harman(1976)の一般因子を含む解、双因子解(bi-factor) を検証的因子分析によって求めている。

データを確認したところ、Grant-White B であった。さらによく確認したところ、Grant-White の素データを完全に入れていた。それにも関わらずHarman(1976) らが分析したGrant-White A ではなかった。
 すべてのタイプを Muthen & Muthen のプログラム(cont14.inp)によって分析してみた。(cont14.out に出力がある)
 結果は似ている。ぎりぎりのところに指標はある。SRMSを 0.06基準で使えば、Grant-White Bと全体が基準内に入っている。Grant-White Aはわずかに基準からはずれる。Pastuer はそれに比べると大きくはずれるが、使用してっもいい基準の範囲内には収まっている。TLIは基準を満たしていない。RMSEA は0.05基準を使うとGrant-White Bのみが基準を満たしている。0.06基準を使うと、すべてのデータが基準をみたしていることになる。マージナルなところに値が集中しているが、概ね許せる範囲にあるといえる。
 パスツール小学校が相対的によくない。グラントホワイト小学校は、パスツール小学校で行ったテスト3,4を使った分析がもっとも適合度がよい。データの適合度だけでいうと、Harman の行ったテスト3,4を差し替えるという配慮は必要なかった。しかし、パスツール小学校のような知能の低い目の層には難しいかったので、どういうテストを施行するかについては正しい判断といえるだろう。

表5.双因子解モデルの適合度指標

test 1,2,5-26test 1-24
G-W aG-W bPastuerAll
個体数145145156301
χ2337.943308.608358.914426.507
自由度231231231231
P値0.0000 0.0005 0.0000 0.0000
CFI0.9230.9430.9040.928
TLI0.9080.9320.8860.914
自由パラメタ数69696969
AIC20802.84820765.12322562.93843512.372
BIC21008.24220970.51822773.37843768.163
BIC(調整)20789.90220752.17722554.97143549.334
RMSEA0.0570.0480.0600.053
0.043 0.0690.033 0.0620.047 0.0710.045 0.061
RMSEA0.05以下のp0.2030.5750.0970.257
SRMS0.062 0.060 0.078 0.059

[結論]

極めて限定されたものであるが、探索的因子分析には耐えられない指標が明らかになった。

 推定因子数差からするとAGFIはまったく使えない。SE-SCREE, χ2, GFI, NFI, 0.95を基準とする NNFI(TLI) もよくない。PA-EIGEN-95, SMC-EIGEN, AIC, CAIC も信頼できない。

 推定因子数差がRAW-EIGEN, PA-SMC-M, BIC, 0.90基準のNNFI(TLI)はどちらともいえない。
 推定因子数差がMAP, PA-EIGEN-M, PA-SMC-95, RMSEA, PGFI, RGFI, RMSR および.90 を基準とするCFI はこの事例においては安定した指標となっている。
 推定因子数差0のうち、MAP, PA-EIGEN-M, PA-SMC-95, RMSEAが正しく4因子と推定した。PA-EIGEN-Mの推定に問題のあることはすでに堀(2001)において示している。MAP, PA-SMC-95, RMSEAの3つが残ることになる。
今後は推定因子数差1以内の指標についてさらなる検討が必要である。

堀(2001)において薦めている、MAPとPA-SMC-95 の間に挟む方法はここでも有効であることがわかった。

[引用文献]

Carroll, J .B. (1993). Human cognitive abilities; A survey of factor-analysis studies. Cambridge University Press.

Gorsuch, R. L. (1983). Factor analysis. 2nd ed. New Jersey; Erlbaum.

Harman, H. H. (1976). Modern factor analysis. 3rd ed. Illinois; The University of Chicago.

服部環 (2002). 因子分析 http://www.human.tsukuba.ac.jp/~hattori/faccon/faccon.html 2003年2月28日

服部環 (2003). 共通因子数の決定とそれを援助するためのコンピュータ・プログラムの開発. 応用心理学研究, 28, 135-144.

Holzinger, K. J. and Harman, H. H. (1941). Factor analysis: A synthesis of factorial methods. . Illinois; The University of Chicago.

Holzinger, K. J. and Swineford, F. (1939). A study in factor analysis: The stability of a bi-factor solution. Supplementary Educational Monographs, No. 48 . The University of Chicago.

  これは検索では引っかからないが,関西学院大学にある。香川大学図書館で見つけてくれた。感謝。

堀 啓造(2001). parallel analysis http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/pa.html

堀 啓造(2002). excel vba program for faccon.exe コバンザメアプリ http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/delphistat/hattori.html

Horn, J. L. (1965). A rationale and test of the number of factors in factor analysis. Psychometrika, 30, 179-185.

Hu,L, and Bentler, P.M.(1999). Cutoff criteria for fit indexes in covariance structure analysis: Conventional criteria versus new altenative. Structure Equation Modeling, 6, 1-55.

Muthe'n, B. & Muthe'n, LMplus: Examples Using Mplus: Continuous Outcome Analyses. http://www.statmodel.com/mplus/examples/continuous.html

Schweizer, K. (1992). A correlation-based decision-role for determining the number of clusters and its efficiency in uni- and multi-level data.Multivariate Behavioral Research, 27, 77-94.

芝祐順 (1979). 因子分析法 第2版 東京大学出版会.


Turner, N. E. (1998). The effect of common variance and structure pattern on random data eigenvalues: Implications for the accuracy of parallel analysis.Educational and Psychological Measurement. 58, 541-568.


Keizo Hori (home page)
Faculty of Economics
Kagawa University

e-mail hori@ec.kagawa-u.ac.jp